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「コラム・レポート集」

“歯科薬品工業の工場内を見学させてもらいました”

細矢 由美子

 梅雨の季節なのに真夏ばりの高温である本日のお天気は、蒸し暑さに弱い私にとってはほとんど天敵のようなものであり、先月訪れた松本の爽やかな風とおいしい空気がやたら懐かしく思えます。

 実は私、ネオ製薬工業の長野工場・研究所内を見学させてもらえるという幸運を先日与えていただきました。

 私とネオ製薬との関わりは、私が東京歯科大学大学院(小児歯科学)の学生だった時代に端を発します。ある日、嫌々ながら教授のいわゆる鞄持ちをさせられていた私は、ネオ製薬の社長の鞄持として、社長の後ろを隠れるように歩いている青年とすれ違いました。その青年が、なんと現在のネオ製薬の社長でした。すれ違いざまにお互い“嫌になっちゃうよね”みたいな意思表示を交わしたかに思ったのは、全くもって単に私の思い違いだったのでしょうか? 私が長崎大学に就任してからも、新製品のモニターをさせていただくなど、講座の研究面で御協力をいただきました。偶然は更に続き、私の留学先の共同研究相手であったFranklin Garcia-Godoyにネオ製薬がVitapexの臨床研究を依頼していたのです。Franklinが本当にデータを取っているかどうかを調べるために、矢野社長がbagを転がしながらSan Antonioにひょっこり現れた時にはびっくりいたしました。(それ以上に、研究費だけもらって研究をほとんどしていなかったFranklinのあわてようは、滑稽でした。)加えて、社長の妹君である専務とは、初めてお会いした時から気心がばっちりで、今ではお互いの立場からみた歯科界について忌憚のない意見をかわしあえる仲です。美味しい食事とお酒に目がないという我々3人(先代の社長さんも入れると4人です)の共通点も無視できない要因です。そんなこんなで、お互い好き勝手な意見を言い合える間柄になりますと、商品の値段や品質についてもストレートな意見を述べるようになります。それならば、一度現場をみてもらったらいいじゃないという事で、若葉の美しい5月に工場内の見学をさせていただける事になりました。

 見学に先立ち、かなりくたびれてきた私の脳みそを活性化させ、普段たたきのめされて意固地になっている心を解き放つ為の準備体操として、お城と山葵畑の見学とお蕎麦の昼食を取らせていただきました。足もお腹も脳みそも血流をベストにした状態で、工業団地にあるネオ製薬工業の工場・研究所にのりこみました。設計がユニークな事で有名な建物ですが、玄関の前に建物を支えるように建っているオレンジのポールは実にimpressiveです。これは、ネオ製薬の目玉商品であるVitapexシリンジの軸の部分のオレンジカラーを現しているのだそうです。そういわれてもう一度眺めますと、確かにVitapexでした。

写真1
写真2

 私の見学に合わせて、Vitapexとフレックスポイント「ネオ」の製造を実施してくださいました。これらの製品を製造している部屋は、二重のクリーンルーム内にあるので、入室時にはものものしい格好をしていただきますよと言われました。まず、第一関門を通過するための作業服が写真1の格好です。この後、映画などでおなじみのエアーを体に吹き付ける消毒カプセルみたいな空間に押し込まれ、全身にエアーをふきつけられ、息ができなくなりました。窒息するかと思った瞬間にドアが空き、もう1枚着ていただきますよと言われて、さらに頭からつま先まで密封された状態が図2です。Vitapexもフレックスポイントもロボット(機械)が流れ作業で操作し、各ステップで実に細かく適正度の検査が行われます。少しでも規格にあいませんと、機械は有無言わずにその段階で製品破棄の決定を出します。さらに加えて、要所要所に人の目によるチェックが入ります。写真は、Vitapexを作っている工程ですが、最後に製品を1本ずつ手に取って、肉眼による検査を行っていました。写真3は、フレックスポイント製作機械の最後の部分ですが、出来上がったポイントは長さと太さをミクロン単位で検査し、適合品か否か検出します(根管充填はそこまで精密に行っていないのにと、何だか恥ずかしくなりました)。検査法も光や音による最先端技術が駆使されており、Dental Materials分野の研究を行っている私には興味が尽きない内容でした。

写真3

 見学に同行してくださった専務が、“私たちの会社は薬品を手がける会社であり、その薬品は高度先進医療用に使用されている事を心に刻んで仕事をするように社員には繰り返し伝えています。また、その事を誇りに思って、より精度の高い製品作りをめざしています。”と言っていた言葉どおり、私の想像を遥かに超えた(失礼な言い方で本当に申し訳ない。)まじめさで製品を作っている姿をしかと見学させていただきました。いつも気軽に使っていて、なんでこんなに値段が高いのかしらと思う部分もありましたが、ここまで手をかけて、よくぞこの料金に押さえていられるものだと、多くの努力を垣間見て、考える事が多い貴重な1日でした。

 あらゆる場面で低価格が要求されている近頃の歯科界ですが、誇りをもって世界に通じるmade in Japanの製品作りを貫いている会社がたくさんあります。歯科医師は、それらの製品の意義をさらに理解し、より丁寧に正しく使いこなせるように知識も技術ももっともっと磨き上げなければと思いました。

 最後に一言:美味しい蕎麦には、山葵と山菜の天ぷらと絶対日本酒が合いますよねー。

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 准教授
LDA顧問、国際渉外(できれば来年から美食実施部という係にしていただきたい)
細矢由美子

 

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